2017.09.11
税務

相続対策のための資産管理法人⑤ ~法人疎開の活用例(前編)~

前回までは不動産の有効活用を法人で行う=法人疎開について説明を行ってきましたが、今回からは法人疎開にはどのような活用方法があるか確認していきます。

公認会計士・税理士 益本正藏氏 税理士法人総和 代表社員。 1990年、慶應義塾大学商学部を卒業。1991年、大手監査法人に入所。1997年、公認会計士・税理士事務所に入所。2000年、益本公認会計士・税理士事務所開設。2013年、税理士法人総和、益本公認会計士事務所開設。数多の知識と経験を活かし、不動産にかかわる税務相談・セミナーを行っている。その他出版多数。

topics1

1、新設法人による不動産投資[br]~個人から法人への移転コストをカット~

近年の法人の減税傾向に対して個人は増税傾向にあり、法人と個人の実行税率の差に着目して、不動産投資のスタート段階から法人で不動産の有効活用を行うケースや、新たに法人を設立して賃貸物件の取得を考えている、といった税務相談も多く寄せられていますし、不動産所有法人に対する金融機関の融資姿勢も積極的な印象を受けます。[br] 当初から不動産投資を法人で実行するメリットは、個人から法人へ不動産を移転させるためのコストをカットできる点です。司法書士・不動産鑑定士・税理士など専門士業への手数料、登記費用、登録免許税、不動産取得税、譲渡税や場合によっては消費税などの各種税金の節約を図ることができます。[br] 外部の第三者から不動産を購入する場合に移転コストの負担が発生するのは避けられないとしても、その後に個人と法人の同族関係者間で、不動産の移転に伴う流通コストを回避できるのは魅力です。

    

topics2

2、個人所有物件を法人へ譲渡[br]~複数の相続対策を同時に可能とする事も~

「相続対策のために個人所有の不動産を法人へ移転した場合にメリットがあるか?」という相談が増加傾向にあります。これらは不動産業者が既存顧客向けのサービスとして法人化スキームの提案や、法人化をテーマにした税務セミナーを頻繁に行っているからでしょう。[br] 土地と建物の両方、あるいは建物だけを法人に移転させるといった形態が考えられますが、資金調達や移転コストの面から、賃貸物件である建物のみを法人に移転するケースが実行し易いようです。[br] 相続対策面では、家賃収入から地代収入に変えることで相続財産の増加の抑制又は鈍化を図りつつ、個人に集中していた不動産所得を法人に帰属させて、推定相続人に役員報酬を支給する事で、給与所得控除額の活用と所得分散を図って将来の相続税納税資金を準備し、法人の内部留保の蓄積による株価上昇に備えて、あらかじめ株主をオーナーから推定相続人に変更するなどの準備をすることで、複数の相続対策も可能となります。

    

topics3

3、採算事業の切り離しによる事業譲渡[br]~リタイアメント資金の確保~

複数の事業を営む中小企業には、本業の不振を賃貸事業の黒字で補てんしているケースもあり、その場合にはオーナー一族の生活資金の確保が事業承継や事業再生の課題となります。[br] 将来的に不採算事業の廃業やM&Aも検討しますが、事前に金融機関とも協議の上で、賃貸事業によってオーナー一族の生活を維持するために、新設法人に賃貸事業を譲渡し、法人からオーナー一族が給与を受給することで、生活資金の確保を図るといった方策も考えられます。[br] 優良な賃貸物件を確保することは老後を豊かにするとも言われますが、加えて隆盛を誇る産業もいつしか衰退産業となってしまう恐れがありますので、事業再生の局面においてリタイアメント資金を確保するためのポイントになります。ただし、事業譲渡等のタイミングを計るには決断と周囲の協力が必要になります。[br][br] 次回は法人疎開の活用例として、応用的なケースを確認していきます。

    
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます