2017.06.28
税務

相続対策のための資産管理法人③ ~取引価額課税~

相続対策の手法は、各家庭の事情や財産の状況により様々ですが、最近の税務相談会などでは、不動産の有効活用を法人形態で行うとした場合の相談が多く寄せられます。但し、法人による不動産の取得等が、相続開始前3年以内では相続対策の効果を発揮しない事がありますので、今回は「取引価額課税」について解説します。

公認会計士・税理士 益本正藏氏 税理士法人総和 代表社員。 1990年、慶應義塾大学商学部を卒業。1991年、大手監査法人に入所。1997年、公認会計士・税理士事務所に入所。2000年、益本公認会計士・税理士事務所開設。2013年、税理士法人総和、益本公認会計士事務所開設。数多の知識と経験を活かし、不動産にかかわる税務相談・セミナーを行っている。その他出版多数。

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1、取引相場のない株式の評価[br]~未上場の株式は、基本的に税法基準で株価評価を行う~

法人形態で不動産を取得等した場合は、その不動産は法人の所有財産として、株式評価額を構成します。未上場の同族会社は、取引相場のない株式として、基本的に財産評価基本通達(以下、通達と略記)により評価をし、純資産価額方式の評価額は、課税時期時点における評価会社の資産及び負債に基づき、評価明細書の第5表に相続税評価額(通達により評価した価額)と、帳簿価額(税法上=法人税法上)を記載して計算します。[br] 実務的には、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債に著しい変動がないと認められる場合には、直前期末時点(直後期末時点を採用する場合もある。)の資産及び負債をもとに評価できるとされていて、課税時期に仮決算を行うとした場合を原則としつつも、煩雑なために課税上弊害がない範囲という条件付きで認められています。

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2、法人が3年以内に不動産を取得等した場合[br]~個人と法人では取り扱いが異なる~

不動産を取得等した場合に、個人では土地等は路線価評価額や倍率評価額、建物等は固定資産税評価額により評価するため、時価と相続税評価額との差額について財産の圧縮が図れますが、法人は取得等から3年間は通常の取引価額に相当する金額で評価するため、財産の組替効果を発揮しません。[br] 通達185(純資産価額)では、3年以内に取得等した土地等・建物等は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価するとあり、これは課税時期の直前に取得等して時価が明らかであろう土地等・建物等についてまで、相続税評価額で評価するのは、時価の算定上適切でないという考え方によります。また帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には帳簿価額で評価できるとされています。[br] これらの土地等・建物等を賃貸借した場合には、自用で評価した場合の取引価額を算定した上で、貸家建付地や貸家の評価をし、3年以内か否かの判定は、直前期末の資産等をもとに評価する場合でも、課税時期から遡って判定するため、評価明細書には他の土地等・建物等とは区分して記載します。

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3、相続対策への活用方法や注意点[br]~資産管理法人の活用には、ケースによっては法人資産税の視点も必要に!~

法人で不動産を所有するケースでは、相続開始までに3年超の十分な時間が見込める場合に、財産の組替効果を享受できることになります。具体的には、借入金により賃貸用不動産を取得等してから3年を経過すると、土地等・建物等は相続税評価額で評価できるようになり、更に貸家建付地や貸家として評価減が適用され、借入金はその時点の債務残高で評価するために純資産価額が下がりますから、推定相続人へ株式の生前贈与を検討するにしても、3年経過後の方が有利な場合が考えられますので、贈与の時期も重要な判断ポイントになります。[br] 株価計算をする場合に、取得等から3年超の建物付属設備は、建物の固定資産税評価額に含まれるとして評価しませんが、3年以内では建物と建物付属設備は別々の資産として、それぞれの建築価額から計算した取引価額課税の対象になります。そのため本来であれば、減価償却計算をスタートされる際の固定資産台帳の精度が要求されることになります。[br] この取引価額課税は購入や建築だけでなく、組織再編行為により取得等した不動産も対象になりますから、例えば、相続開始前3年以内に合併等によって承継した土地等は、法人税法上の適格組織再編に該当して簿価引継が強制される場合であっても、存続法人の株価計算上では、合併承継した土地等は路線価評価でなく時価評価することになります。[br] 昨今の相続税法の改正、不動産有効活用、法人疎開といった一連のトレンドともいえる相続対策の手法では、主に個人資産税がフォーカスされていますが、法人で不動産の取得等を検討する場合に、個人オーナーの中には複数の法人を所有している方もいるため、赤字の法人と黒字の法人があれば、組織再編を検討するといった法人資産税の視点も必要ですし、資産税ですから当然ながら固定資産の知識も必要です。[br] 昭和63年に制定された旧租税特別措置法69条の4のいわゆる「取得価額課税」は、不動産の取得後3年間は路線価評価額ではなく、取得価額で相続税課税をするとした規定でしたが、バブル崩壊による時価と路線価の逆転現象と、司法判断により財産権の侵害として違憲判決を受けた事によって、平成8年に廃止されました。[br] 取得価額課税の廃止により、個人が取得等した不動産の3年しばりは無くなりましたが、法人が取得等した不動産について、取引価格課税としての3年しばりは、株価評価をする際の通達で規定が継承されてきています。法人形態で行う不動産の取得等による有効活用と相続対策を検討する上では、知っておいた方がよい経緯でしょう。何故なら、不動産オーナーでバブル期を目の当たりにされてきた世代の方や、不動産業者の方の中には、お客様に提案をする必要から、取引価額課税の事を知っている方もいるためです。

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