2017.04.07
不動産市況

不動産市場が転換期に ~調整局面に向かう~

年初に、米国のトランプ大統領が誕生したが、その政策に不信を抱く人も多く、政治・経済全体について様子見の気分が強まっていて、停滞感が感じられる。しかし、足元の日本の不動産市況に大きな変化は見られない。まずは、不動産市場全体の動きを解説したい。最初に、新築分譲マンションだが、高値警戒感があり、以前のような活発な動きはない。一方、中古マンションや中古の戸建て、低価格の新築戸建ての取引は底堅く推移している。また、不動産の投資需要も超低金利の追い風を受け、依然として衰えていない。ただ、収益的に魅力的な物件が少なく、売り物は増えているのだが(図表1)買いたい物は少なく、 品不足の状態が続いていて、取引量は減少している。とはいえ、投資家の取得意欲は高く、当分の間、現在の状況が続くものと考えられる。[br]相続対策としての不動産ニーズについても、税制の強化によって相続税の課税対象となる人が拡大していることから、今後も底堅い需要が見込まれることは必至だと言える。ただ、賃貸アパートの建築・供給については供給過多で、徐々に先細り傾向を見せる可能性が高く、転換期に来ている。最後に、土地の需要だが、不動産市場で最も希求されていて、価格も高水準で推移している。その用途についても、マンションや建売住宅、アパート、ホテル、シェアハウスなどの事業用地や注文住宅用地など、多岐に亘っている。ただ、 事業の採算性を懸念する声も出始めており、高値でも追い続けるという姿勢は少なくなってきている。これまで供給不足が指摘されてきた物流施設については、工場跡地などを利用して次々と作られた結果、需給状況は緩和された落ち着いた動きとなってきた。[br]以上、最新の市況について述べてきたが、これからの市場動向についての予想をしてみたい。

不動産市況アナリスト 幸田昌則氏 ネットワーク88主宰。不動産業の事業戦略アドバイスのほか、資産家を対象とした講演を全国で多数行う。市況予測の確かさに定評がある。

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上記コメントの図表1

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金融の動きが鍵となる

この数年間、住宅・不動産市況の隆盛を支えてきた最大の要因は、超々低金利と異次元の金融緩和であり、現在もその状況が続いている。この金融環境に変化が出てくると、市況にも大きな影響を与えることになる。しかし、国内には大量の現預金があることを考えると、容易に変化するとは考えにくい。ただ、海外要因による変化は想定しておく必要があり、金融動向に注意をしつつ、リスク管理を怠ってはならない。[br] 今年は「金融次第」と言える。

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価格のピークは過ぎた

「超低金利と異次元の金融緩和」で、不動産価格は高値圏にある。「高過ぎる」という水準になっている物件も少なくない。それらは既に経済的な合理性を超えていて、投資対象としても魅力がなくなっている。それでも取引が成立しているのは、相続対策など、別の要因によるものである。[br] 高額といえば、東京都心部や京都の分譲マンションだが、この中には顧客の支払い能力を大きく超えたものもあり、このような状態の物件が数多く見られるようになっていることから、価格の調整は不可避と思われる。また、売買価格だけでなく、今の賃料の上昇にも、限界が来ていることも認識しておきたい。今後は、価格と立地が問われることになる。

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オフィス賃料にも上限

相続税強化への対応策として人気を集めたのが賃貸アパートの建設であり、全国的な広がりを見せた。2015年以降、賃貸オーナーへの貸出(融資)残高が急増していることからも、税制改正の効果(副作用)がよく分かる。(図表2)。[br] 大幅な供給増により、最近では、従来からのオーナーや、ムードで賃貸アパートを建てた個人投資家の中にも、経営が厳しくなっている人が散見されるようになった。ただ、東京やその他の人口の増加が続いているところでは、賃貸住宅の需給がタイトとなっている。特に、東京の都心、駅近など利便性に優れた地点では、賃料の低下は見られず、二極化が一段と進行している。[br] オフィスについては、東京圏でも事業所数の減少、勤労者の減少が続いていることは認識しておきたいが、オフィスについても立地と賃料のバランスが問われている。

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企業が安定収益を求めて不動産に高い関心

日本の人口減少、高齢化社会を見据えて、不動産の安定的な賃料収入に魅力を感じ始めた企業が急増している。その代表は、JRや私鉄、JP、老舗の企業などだが、不動産を所有する企業は、「本業を補完するため」、或いは「本業との二本柱にするため」などと考え、積極的な動きが目立っている。[br] 現在のマイナス金利と人口減少などの社会構造の変化への対応策の一つとして、企業が不動産に関心を持つことは必然で、時代に合ったものだと思われる。[br] また、経営者自身の高齢化による会社の売買、清算、廃業などの増加は、今後、必至であり、この面からも、企業が不動産に関心を持つ動きは活発化していくことになる。[br][br] 今後を展望するとき、結論としては、不動産市況は金融が鍵を握っていると認識しておきたい。

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