2017.04.17
税務

相続対策のための資産管理法人① ~法人疎開~

相続対策の仕方はその案件や家族の状況に応じた様々な方法が考えられますが、改正相続税法の施行により注目を集めている資産管理法人を活用した相続対策について、6回にわたり解説をしてみたいと思います。キーワードは、法人を活用した相続対策=”法人疎開”です。

公認会計士・税理士 益本正藏氏 税理士法人総和 代表社員。 1990年、慶應義塾大学商学部を卒業。1991年、大手監査法人に入所。1997年、公認会計士・税理士事務所に入所。2000年、益本公認会計士・税理士事務所開設。2013年、税理士法人総和、益本公認会計士事務所開設。数多の知識と経験を活かし、不動産にかかわる税務相談・セミナーを行っている。その他出版多数。

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1、法人疎開[br]~節税だけでなく複数の相続対策も可能!~

平成28年12月に国税庁より発表された「平成27年分の相続税の申告状況について」によると、相続財産の金額に占める土地の割合は38%(平成26年分41.5%)とあり、平成25年度税制改正による改正相続税法が平成27年1月1日から施行され、基礎控除額4割縮減により課税ベースが拡大して、小規模な相続案件の増加による相続財産に占める現金預金比率が4%程度増加した関係で、相対的に土地の占める割合が下がった状況ですが、依然として土地の割合が4割程度もあるという事実が見て取れます。[br] 相続対策としての法人活用とは個人と法人の税率負担の開差に着目し、個人所得を法人に移転させることにあります。[br] 所得税は累進課税となっていて平成29年時点の最高税率では、所得税45%とそれに対する復興特別所得税(基準所得税額に2.1%加算)及び住民税10%の合計約56%に対し、法人の実効税率は約30%のため約26%も税率負担が異なります。[br] オーナーの不動産収入を法人に帰属させて、法人での損金計上による所得の圧縮のほか、親族役員への給与等の支払いにより所得分散効果と納税資金の準備が図れることや、オーナーの相続財産の増加抑制といった複数の相続対策だけでなく、後継者に法人の株式等を保有させて経営に従事することで、後継者意識を醸成させるといった事業承継面の効果も期待できます。

    

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2、法人化の形態と特徴[br] ~“法人化“にも効果の異なるパターンがあります~

(1)資産所有法人方式[br] 法人の出資者は後継者にしておくべきで、法人が賃貸用不動産を所有するために所得分散効果は一番見込めますが、個人所有の賃貸用不動産を法人に移転するには、個人の譲渡税と法人は不動産取得税等の流通税の負担が発生するほか、法人で不動産の購入資金の調達課題が生じます[br] 譲渡対象となる不動産は優良な賃貸物件でローン完済後の老朽化物件などが理想的とされますが、賃貸用不動産を初めから法人で取得すれば個人の譲渡税負担をカットできます。[br] (2)サブリース方式[br] 個人所有の賃貸用不動産を法人が一括借上げして転貸する方式で、家賃保証といったりします。[br] オーナーは一定期間の賃料が見込めるためキャッシュフローの安定化が期待でき、法人は入居者からの受取家賃とオーナーへの支払家賃との差額(賃料収入の15~20%程度)が所得となりますが、空室率が高いと受取と支払の逆ザヤリスクもあることから、一般的にローン付の築浅物件などが適しています。[br] (3)資産管理法人方式[br] 賃貸用不動産の所有者は個人のままで入居者との関係も変えずに、法人に管理業務としての管理料(賃貸収入の5~10%程度)を支払いますが、管理料の設定が高額の場合は、税務調査で否認されるリスクが高くなります。節税効果や所得分散効果は限定的なため、一般的に空室の多い物件や店舗物件などが適しています。[br]

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3、事業承継の観点[br] ~規模やタイミングによっては効果が見込めないことも!~

不動産の有効活用や法人疎開のポイントとして、税務相談会などでは下記のように説明しています。[br] ①法人や親族に所得分散が可能な規模か? → 小規模な不動産賃貸では効果が見込めない。[br] ②相続発生までに時間的な余裕はあるか? → 時間の猶予が無いと財産の移転が進まない。[br] ③相続税の納税額はどのくらいか? → 納税インパクトが小さければ法人疎開の必要性に欠ける。[br] 賃貸経営は、物件の取得・維持管理・売却・相続などの各局面で税金負担が生じますから、相続対策としての不動産の有効活用や、法人疎開などで課税が行われる複数の税目の知識を必要とします。[br] 地域によりますが、昨今の賃貸市場は明らかに供給過剰ですから、不動産賃貸業として確かな展望が要求され、次代に財産を承継させるには、後継者に経験や知識を習熟させる期間も必要ですし、換金のできない不動産は財産とは言えないため、処分可能性の高い優良物件を維持管理する必要があります。[br] 優良な賃貸物件の所有は、経営の第一線から引退後の生活の質を向上してくれるでしょうし、個人が認知症などを発症して契約行為が結べなくなったとしても、法人疎開によって親族で構成する取締役会決議により意思決定を可能とするなど、節税以外のメリットも見いだせます。

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