新築マンションの価格は、リーマン・ショック以降も上昇が続いた。中古のマンションや戸建ての成約価格が低下したのとは対照的で、その後、両者の格差は拡大していった。図表❶で示されているように、新築分譲マンションの価格はデフレ経済が続く中で上昇している。特に、安倍政権の誕生後、大幅な金融緩和と超低金利政策によって、価格が一気に押し上げられた。[br] この背景には、顧客が利便性を求めて都市の中心部や駅近を希望するようになってきたことが挙げられる。供給側のデベロッパーも、そのニーズに応えるために地価の高い中心部の事業用地を高値で仕入れることになった。さらに、追い打ちをかけるように建築コストが急騰したために、販売価格が上昇した。東京23区や京都市内では、現在、年収の10倍程度の水準になっている。また、大都市圏の新築建売住宅も、地価の上昇で販売価格が高くなり、売れ行きにブレーキが掛かり、値引き処分も珍しくなくなっている。[br] 最近、マンションデベロッパーや建売業者の中には、高値で仕入れた事業用地を事業化せずに、更地のまま転売してしまう例も散見されるようになった。建築コストが高止まりしていることで採算が見込めないとの判断が多い。いくら利便性を重視するとはいえ、実質所得が伸びていない状況下でブレーキがかかってきた。市況は明らかに曲り角に来ている。
昨年末から不動産市況に変化が見られる。アベノミクス政策・日銀の異次元の金融緩和により住宅・不動産全体の需要が喚起され、好況が続いていたが、地価や住宅価格、収益物件価格などが高騰し、顧客の取得能力を超えるようになった。即ち、不動産価格が上限に近付き、市場に在庫が滞留し始めている。加えて、世界同時株安や株価の乱高下で経済の先行き不安が生まれ、不動産市況の潮目が変わってきた。今回はその変化について解説をしてみたい。