2016.03.01
税務

賃貸住宅における小規模宅地等の特例について

前回は、相続税法における賃貸住宅用の敷地の取扱いについてご紹介しました。[br] 今回は、相続税計算における賃貸用不動産の小規模宅地等の減額特例について、詳しくご紹介します。

税理士 西村敦正氏 株式会社BAMC associates代表税理士。相続・事業承継を中心とする資産税が専門。1000件を超える相続コンサルティング実績を持つ。区画整理や不動産活用・開発に伴う案件に精通している。

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賃貸用不動産における小規模宅地等の特例とは

相続や遺贈によって土地を取得した場合、その土地に被相続人が自宅として住んだり、事業の用に供していた土地があった時は、その土地が被相続人の生活基盤になっていたことに配慮するとともに、事業継続をしやすくするため、宅地評価額の一定割合の減額が可能です。これを「小規模宅地の特例」と言います。賃貸住宅用の土地に適用される特例の対象となるものが「貸付事業用宅地等」とされ、これは被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等で、次の❶または❷の要件(図表❶)のいずれかを満たすその被相続人の親族が相続または遺贈により取得したものを言い、200㎡を限度に50%の評価額の減額が適用されます。[br]  なお、特例の適用には、相続税の申告書の提出期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月)までに共同相続人等によって特例の対象となる宅地等が分割されることが必要となります。[br] 要件❶ 被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等[br] ●その親族が、相続開始時から申告期限までの間にその宅地等に係る被相続人の貸付事業を引き継ぎ、その申告期限までその貸付事業を行っていること(事業承継要件)[br] ●その宅地等を相続税の申告期限まで有すること(保有継続要件)[br] 要件❷ 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていた宅地等[br] ●その被相続人の親族がその被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続きその宅地等に係る貸付事業を行っていること(事業承継要件)[br] ●その宅地等を相続税の申告期限まで有すること(保有継続要件)

    

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小規模宅地等の特例の事例

賃貸用不動産が前記要件を満たすことで、200㎡を限度として50%の評価額の減額が適用されますが、同じ相続税評価額でも路線価の異なる都市部と地方では評価額の減額が異なります(図表❷)。[br]  貸付事業用宅地が減額の適用を受けることができる敷地面積の上限が200㎡であることから、路線価の高い都市部については、敷地全体の評価額(7900万円=7900万円×200㎡/200㎡)の50%(3950万円)が減額となります。それに対して地方では、所有する敷地全体1000㎡のうち200㎡分の評価額(1580万円=7900万円×200㎡/1000㎡)の50%(790万円)の減額にとどまります。[br]  大都市郊外や地方で広い土地を所有する場合は、特例の適用要件が「地価ではなく面積」である点に注目した相続シナリオを練るべきでしょう。前記のように評価額が同じ土地を所有している場合、地価の安い地方では特例の対象となる面積の全体に占める割合は必然的に小さくなります。つまり、相続税計算での特例部分は小さく、その分、相続税評価額が増えることになります。一方、地価の高い都市部であれば、同じ評価額でも所有する土地面積は小さくなり、その分だけ特例の対象となる面積の全体に占める割合は拡大します。[br]  このように、小規模宅地の特例は都市部の土地所有者に有利な税制です。複数の土地を所有している場合は、より坪単価の高い土地で特例が使えるような資産の組み替えや追加購入を検討しましょう。

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